プロデューサーにnnnooooonnについて訊く

メンバーが存在しないバンドnnnooooonn。そこから生まれる音楽は?その存在意義とは何か?今回は根源的な話を少しでも分かりやすく理解していただきたく、インタビュアーを立ててプロデューサーであるTakayuki Niwanoのインタビューを行いました。

インタビュアー(以下略・i):それではまずバンド名の由来をお聞きしたいのですが?
Takayuki Niwano(以下略・n):このバンドのプロデュースをすることになった時、学生時代に作った実験作品のことを思い出しました。その曲のタイトルが「nnnooooonn」でした。バンドのイメージの妨げになる恐れがあるので、曲の説明は控えますが、ある音響から想起された文字列とだけ言っておきましょう。バンド名からイメージを膨らませるのに抽象的であまり言葉として機能しないであろうという思惑からこの文字列をバンド名にすることにしました。
i:因みに読み方は?
n:読み方は特に決まってないんです。当時作っていた曲の音をそのまま発音したわけではなく、あくまでイメージで付けたので僕自身発音出来ません(笑)。この文字列を見た方々が各々で自由に読み方を決めていただいて構いませんし、アルファベット読みで覚えてもらってもいいでしょう。
i:ライブ出演依頼も受け付けていますが、ライブをやるとするとどんな内容になるんでしょうか?
n:現段階では私が代理でステージに上がることになるでしょう。出来る限り勝手なイメージを押し付けない程度にバンドのことを説明しようと思っています。まあオファーがあればですけど(笑)。それから質疑応答の時間ももちろん設けます。それでも時間がある場合は私のライブ演奏をお聴きいただくか、または代理のバンドをお呼びしてnnnooooonnのイメージの一端を表現してもらうことも考えています。まあこの主旨を理解してくれて協力してくれるバンドがいればですが(笑)。
i:音を発しないというコンセプトからジョン・ケージの「4分33秒」を想起する人も少なくないと思いますが、このメンバーがいないという発想はどこから生まれたのでしょうか?
n:確かに「4分33秒」という楽曲が存在しなければ、このバンドの発想も生まれなかったかもしれません。しかしジョン・ケージの場合は演奏者がいて演奏を指示する楽譜が存在します。nnnooooonnはその演奏者もおらず曲も存在しない。その点の違いは聴き手にとっては非常に大きくて「4分33秒」の場合、例えばコンサートホールなどで演奏されると、周りの音や自分の体を動かした時の微かな音も楽曲に取り込まれる可能性を持っています。ヤン富田氏のカバーバージョンはCDで完全な無音状態を作り出していますが、やはりヘッドフォンで外音を遮っても耳とヘッドフォンの擦れる音や心臓の鼓動が取り込まれる可能性がある。その点、nnnooooonnの場合は曲自体存在しないのでそういう外音は一切含まれない。聴き手の頭の中で鳴っている音だけが唯一のバンドの音なのです。仮に今後代理のバンドにイメージで演奏していただいたとしてもその音自体は別物であって、やはり最終的には聴き手のイメージのみが完成形なのです。ですからライブでバンドの演奏時間を使って無音状態を作る行為はあまりしないようにしたいと思っています。そうするとほとんどの人が「4分33秒」を演っているんだと勘違いしてしまうでしょうから(笑)。
i:それは明確な違いだと思います。そんな存在だけが唯一の手掛りであるバンドのプロデュースをなさっているTakayuki Niwanoさんの役割は?
n:こうやってなるべく聴き手が自由にイメージ出来るようにバンドの主旨説明をしたり、あとはスタッフが他にいないのでマネージメントも兼ねていたり(笑)。
i:メンバーがいないのにですか(笑)?
n:ライブのオファーなどは私が受けますから(笑)。それからイメージが漠然とし過ぎるのを避ける目的である範疇を超えない程度に固定したイメージを提示することもあるでしょう。このブログのタイトルロゴや先日貼った画像が既にそういったイメージの一端です。後々Tシャツを作ったり・・・。
i:ズバリ!このバンドに意義はあるのでしょうか?
n:あります!少なくとも私はこのバンドに存在意義を見出せる確信を持った上でプロデュースすることを決意しました。
i:その意義について今具体的に述べることは可能でしょうか?
n:長くなりますが。
i:お願いします(笑)。
n:話が多少逸れますが、まず自由の定義について簡単に話したいと思います。例えばこのバンドにはnnnooooonnという名前がありますね?しかしこの名前さえ持たない「あるバンド」としてプロジェクトを始動したとします。するとこれは特定のバンドではなくなるということです。仮りに「ある特定のバンド」だったとしても、それはプロジェクトとしての仮定は成り立ちますがやはりバンドとしては特定されないと思います。するとこれはまた違う主旨になってしまうんです。特定のバンドではない、ということは既存のバンドである可能性も出てくる。すると聴き手はこのプロジェクトの存在を認識しづらくなってしまいます。そこでバンド名だけを提示する。一つの制限を設けるとそこから聴き手が自由に発想する余地が生まれるのです。このように自由の根底には必ず制限が存在していると私は思うんです。普段の生活の中でも常にそれは感じます。自由な人というのは勝手なんではなくて制限という柵の中で上手く行き来しているんです。如何に自分の感性を制限に浸透させるか、それが大事なんだと思います。ここまで如何でしょう?
i:・・・多少なりとも理解と同意は得られると思います。
n:ありがとうございます(笑)。つまりはバンド名の提示によってこのバンドは特定され尚且つ聴き手のイマジネーションによってあらゆるバンドイメージが生まれるんです。そして聴き手がこのバンドを想像することを止めない限りnnnooooonnは永遠にどこかに存在するのです。最悪私だけが想像している限りはこのバンドの存在意義はあるんじゃないかと・・・(笑)。
i:なるほど。メンバーがいなくともバンド名という制限があって、そこから何かを生み出す人がいれば活動する意義があると?
n:そう思います。
i:お話を伺っていると何かに対するアンチテーゼにも聞こえてきましたが?
n:当然それもありますね。昨今バンドというものが音楽表現の媒体として何らかのネガティブな拠り所になってきているのではないかという懸念に対する一つの問題提起だと思っていますから。
i:それはTakayuki Niwanoさんが過去に携わってきたバンドでの体験から感じてきたことですか?
n:そうですね。今はソロ活動を基本にユニットなどで制作活動をしていますが、バンド内での人間関係だとかそこから生まれる創作意欲とその裏側の怠惰なイメージは過去にやってきたいくつかのバンド活動の中で常に心の奥のほうにあったと思います。もちろん素晴らしい音楽体験であったことは言うまでもないのですが。
i:その怠惰なイメージとは?
n:それについては又更に長くなるので止めましょう(笑)。あまりに個人的な話ですし。また機会があれば私自身のインタビューで話しますよ。
i:それでは最後に今後の活動予定をお願いします。
n:一番難しい質問ですね(笑)。まあ今後は少しずつでもこのブログを更新していきたいと思っています。そしていつかライブのオファーが来たらいいなと・・・(笑)。トリビュートアルバムなんて作れたらいいですね。一枚もレコードを出さずしてトリビュート発売!なんて感じで・・・。
i:具体的な希望の話をすると逆に現実味がなくなっていきますね?
n:そうですね(笑)。具体的な予定はあまり無いですね。僕の頭の中では常に活動してますけど(笑)。
i:ありがとうございました。

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